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2019年7月31日更新 3736

ブラウントラウトの湖での釣り方と、超大物と出会うための基礎知識

湖のブラウントラウトは、条件が整えばかなりの大きさに成長します。これまで、あまり紹介されてこなかったこの釣り方について、湖流、風、天気、気温、気圧、サーモクラインの面から解説し、釣りへの活かし方について解説します。

OutSeekers編集部

OutSeekers編集部

生涯の思い出になるブラウントラウトに出会うために。釣り方より先に知るべきこと

ブラウントラウト、それも生涯に一度出会えるかどうか?という大物は、釣り人が考えるようなポイントにいるとは限りません。何故なら、これまであまり湖のブラウントラウトの習性に基づいた解説がなされたマニュアル本がなく、多くはニジマスの習性を基準に湖の釣りが解説されてきたからです。そこで本シリーズでは少しずつ、最初に湖に立った時、ブラウントラウトを釣るために何を見、何を感じればいいか?について、ご説明します。

日本には、在来種や固有種の他に、数多くの外来種のトラウト(マス類)が棲んでいます。今日では、各地の漁業組合が行う放流事業により、多くの河川や湖に魚が放流され、釣り人を楽しませていますが、中には釣り人自身が無許可で放流し、広がっていった魚達もまたいます。外来種の淡水魚ではブラックバス、ブルーギルが有名ですが、トラウトの中ではブラウントラウトという魚がそれにあたるでしょう。この魚が正式に放流された記録はなく、恐らくニジマスに混ざって北米から持ち込まれたのであろうというのが定説です。一説には、個人で卵を輸入し、放流をしていたという噂も聞きます。ブラウントラウトは、最初は、中禅寺湖や芦ノ湖といったごく限られた湖でしか釣れない、釣り人にとっては貴重な魚でしたが、人の手により生息域を広げていきました。そうした数奇な運命でこの日本にやってきた子孫たちが、現在、私たちを虜にしているブラウントラウトなのです。

諸外国では川での釣りが一般的なブラウントラウトですが、もちろん湖でも釣ることが出来ます。食性は動くものは何でも食べる、というと語弊がありますが、小魚から水生昆虫、陸生昆虫まで捕食し、小動物を食べていた記録もあります。また、ほぼ生涯にわたって大きくなり続けますので、湖に棲むブラウントラウトは、1m近く、重量は10kg以上にまで成長します。適応能力は非常に高いので、棲んでいる湖の特性に合わせ、生活様式を変えていくことができます。よく比較されるニジマスとは、生活様式が似ているところも大きく違うところもあるので、釣り分けようと思えば釣り分けることが可能です。また、季節にもよりますが、食べてもとても美味しい魚です。ここでは、そんなブラウントラウトの湖での釣り方を、ご紹介していきます。

この記事ではブラウントラウトを釣りに行く前段階として捉えておくべき基礎知識、特に湖の環境の読み方を解説します(第1章)。この記事と合わせて読むべき記事をシリーズ仕立てでご紹介します。

湖に立ってブラウントラウトの居場所を考えてみよう

日本には多くの湖があり、多くの魚たちが棲んでいます。魚たちはそれぞれの生態に合わせて季節により生活様式を変えながら、生を営んでいます。湖の釣りというと、だだっ広くてどこから釣りをしていいかわからないかも知れません。当てずっぽうに過去の経験に従って釣りをするのもいいのですが、それでは宝くじのような釣りになってしまいます。魚も生き物ですから、何かの法則に従って生きています。寒い時には暖かい所を好み、暑い時期には涼しい場所を求めて移動します。最初に湖に立った時、まず、その日の魚の居場所を絞り込むことが最も大切です。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:天気を読む

大抵の人が最も注意しているのが、釣りをする日の天気です。晴れているのか曇っているのか、雨なのか。釣り場は自然の中にあり、多くは山間部に位置していますので、必ずしも天気予報通りにはいきません。山登りが趣味の人はわかると思いますが、山の天気はとても変わりやすいものです。

魚たちも天気をとても気にしています。では、魚は天気の何を気にしているのでしょうか?天気によって左右されるのは、水中の光の透過率です。魚の瞳孔は人間のそれよりも鈍いため、魚たちはその感覚器官の多くを体側線に頼っています。目で捕食対象を追いかけているのは、対象になる小魚が近寄って来た場合だけで、ブラウントラウトの大物は、音などの感覚で最初にエサがいるかどうか?の情報を感じ取っています。
一般的な湖の場合、魚が泳いでいる水深は深くても20mくらいです。天気の日に釣れないというのは、後で書く気圧の問題もありますが、この光の透過率にも原因があります。何故、一般的に朝夕の釣りが釣れるのか?水生昆虫も小魚も、その時間帯に餌をとったり、活動したりしはじめるので、警戒心が薄れているからです。

従って、湖に立ち、まず天気の変わり目に気をつけてみてください。これから晴れるのかな?それとも曇っていくのかな?ということです。たとえば一日中、雲一つない晴天の日の夕方は、気候の変化が少ないので、注意が必要です。天候の変化があった方が、水中にも変化をきたしやすく、魚の行動にも変化が起こりやすくなります。従って、一日中晴れていた日は、夕方になるまでは釣りが難しいと思った方がいいでしょう。そういう日は、天候以外の別の点に着目する必要があります。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:湖流を読む

湖の水が止まっているというのは間違いです。湖の水は絶えず動いています。それを湖流(こりゅう)と言います。例えば、岸に近い所は動いていないように見えても、ずっと沖はどちらかに向かって水が動いています。その湖の水を動かしているのが、風です。
水は気体にも流体にも固体にもなれます。柔軟に変化できるかわりに、その変化には時間がかかります。夜通し風が吹いていた次の朝、晴れていても魚の活性が比較的上がっている場合があるのは、夜中に吹いた風の影響で湖流が発生し、水中の様子が変化したことにより、魚の活性に影響を与えているからです。そして、湖流が読めるようになると、ある程度、魚の動きも読めるようになります。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:風を読む

湖流を起こすのは風です。湖流が釣りに影響があるように、その日の風向きが釣りに大きく影響します。右からなのか、左からなのか、或いは向かい風か追い風か。今、立っている場所に吹いている風が右からと言っても、もしかしたら対岸は風がないかもしれません。入り組んだ湾になっている場所は、吹き降ろしの風で渦を巻いているかも知れません。

また、一面で、風は別の影響も与えます。水生昆虫の羽化が終わった後、陸生昆虫が活発に動き出します。その陸生昆虫は、風に乗って水面に落ちます。それらは貴重なタンパク源となるため、魚たちは時間帯に関係なく捕食行動を起こします。その時、右から吹く風は右から餌を運んできますし、追い風なら自分の後ろから餌を沖に運んでいきます。その風向きは、ある程度、天気予報の気圧配置によって、予測することが可能です。天気予報を見る場合、晴れや雨の他に、気圧配置と風向きに注意しておくと良いと思います。

そして、最も大物のブラウントラウトが釣れる条件の一つが、向かい風の強風です。それも投げたルアーが手前に戻ってくるくらいの時、足元は風で巻かれた水が底を攪拌し、濁りの帯が出来ます。お分かりだと思いますが、この時は大チャンスです。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:水温と気圧の関係

湖の釣り人

まず水温についてですが、湖の釣りで水温変化を起こすのは、表層と岸沿いのあたりだけです。ですから、エサになる水生昆虫の羽化やその水生昆虫を捕食しに来る小魚を狙っているブラウントラウトは、「エサがどういう動きをするのか?」を水温によってある程度判断しています。

次に、気圧配置は色々なものに影響を与えます。風を起こしたり雨雲を呼び込んだり、あるいは晴れさせたりということです。晴れた日が釣れないのは、先程の光の透過率の他に、高気圧による空気の圧力で湖水全体を押すために、水中の生物の活動が鈍ることも原因となっています。風があればいいのですが、風もない穏やかな晴れ間は、魚の活性を鈍らせます。低気圧はその逆で、雲による影を呼び、水が軽く動きやすくなり、魚の活性は上がります。天気が悪いと魚が釣れるというのは、その辺りが原因です。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:サーモクラインについて

皆さんは、サーモクライン(水温躍層)というものをご存知でしょうか?湖の水は湖流によって絶えず動いています。また、天気等により水温が変化します。ところが、湖全体にまでそれが影響するわけではなく、水面から一定の深さで湖の温度は一つの層を形成しています。その層をサーモクラインと言い、水中の酸素濃度にも影響を与えます。淡水生物の研究者は湖に実際に潜って観察をしたりしますが、水中の多くの魚たちはこのサーモクラインを生活圏の境目にしていることが分かると言います。
実際、最深部が100mを超えるような深い湖では、サーモクラインより更に深い層にあまり生物は見られないと言います。また、底の水は重いため、沈殿したものはそのままの状態で動くことはありません。酸素濃度も低いため、生物が住むには適していないとされています。従って、水中の小魚や、ブラウントラウトのエサとなる魚の群れは、このサーモクラインを境に行動していることを知っておいてください。

ブラウントラウトの中でも、大物になると、岸に近づくのは一定程度の条件が整った時だけです。普段は、このサーモクラインの境に群れているエサになる魚の群れに着いて沖合を泳いでいるか、これらの群れがサーモクラインを離れて岸に近づきエサを取るタイミングを狙って、カケ上がり(浅場と深場の境目)付近にいます。また、ブラウントラウトの釣り方の中でも、釣れる条件を考えた時に、重要な要素とする必要があるのが、このサーモクラインなのです。サーモクライン(水温躍層)とは温度の違いの層による、音の伝達の境目でもあります。

サーモクライン付近を泳いでいる魚と、サーモクラインを越えて、より浅い水域に入った時のブラウントラウトは、サーモクライン付近にいる時は上を見ていますが、浅い水域に入ると横を見ています。つまり、見る目線が変わります。同時に、浅場にいるブラウントラウトほど、音に敏感に反応します。後に触れますが、これが、ルアーの着水音に大きく関係しています。サーモクラインの上で発生した音は下に抜けるのではなく、サーモクラインを境に横に広がっていきます。逆に、サーモクラインの下で発生した音が、上に突き抜けることはありません。サーモクラインによって音が遮断されるのです。これは、今まであまり語られなかった点ではないでしょうか?

つまり、ルアーを遠投して水深10mはあるはずの場所で魚が掛かる場合、魚は底から上がってきて食っているのではなく、表層に近い場所を回遊していた可能性が非常に高い、ということです。そして、サーモクラインが出来る層は季節や天候によって、常に変化しています。

ブラウントラウトのポイントとタイミングを知るために:月齢の話

月の満ち欠けのことを月齢と言います。月の引力は海水の干満にまで影響を与えるほどです。魚もこの月の満ち欠けには影響を受けています。特に大物のブラウントラウトは、産卵期と秋、エサを荒ら喰いする時期は、この月の満ち欠けに合わせて大胆に行動します。これは昼間でも関係ないようです。例えば、新月と満月の変わり目などは、思いもかけない大物に出会うこともあるかも知れません。ただし、日本では淡水における夜釣りは禁止されていますので、その点、くれぐれも注意が必要です。

ブラウントラウトが釣れる条件:居場所を知る

釣り場に行かなければ、ブラウントラウトは釣れません。釣り場に立ち、魚の居場所を想像してみるのは楽しいものです。そして、自分のお気に入りだったり、試してみようと思ったり、過去によく釣れたりしたルアーを結ぶ時の胸の高鳴りは、釣りを経験した者にしか味わえないものです。その最初の第一歩として、釣り場に立った時、何を見、何を感じてどこで釣るかが分かり、その日の魚の動きを見極めることが出来たなら、きっと素晴らしい魚と巡り会えるはずです。

湖のトラウトフィッシングの中でも難しいと言われている、ブラウントラウトの釣り方には、各人の経験や知識が大きく影響します。難しい釣りだけに、どれだけの情報量を持っているか?が、素晴らしい魚に出会えるか否かの境目になります。湖のブラウントラウトの釣りは、釣れないと敬遠される方も多いのですが、実は皆さんが想像されるよりはるかに多くの魚や、見たこともない大きさの魚が、水中にいて、皆さんの挑戦を待っています。その第一歩が、湖を知るということです。むしろ、釣れるか釣れないか?の大部分が、魚の居場所を見つけられるか否か?にかかっていると言ってもいいでしょう。ブラウントラウトの大物は警戒心も強く、中々、簡単に釣り上げることは出来ませんが、居場所を突き止めて活性が上がった瞬間に、ルアーを投入すれば、意外に呆気なく釣れたりするものです。

参照:貧栄養湖である支笏湖湖岸域の底生動物群集の時空間的変動:齊藤裕美,望月 成,谷野賢二Spatial and temporal littral benthic assemblages in oligotrophic lake,Lake Shikotsu:陸水学雑誌(Japanese Journal of Limnology

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