山岳渓流のイワナをフライフィッシングで釣るコツ~季節別ポイント選びとフライセレクト

作成:2019.12.20更新:2021.08.20

フライフィッシングで釣り上げたイワナを石の上に置いて撮影

山岳渓流に棲むイワナをフライフィッシングで釣る

山岳渓流というフィールド

真夏の山岳渓流

山岳渓流は、その名の通り人里離れた山に囲まれています。岩が多く、比較的落差の大きい流れが特徴です。しかし、終始滝のような流れが続いているわけではありません。速めのシャローや緩やかなプール、激しい落ち込みなどが短い区間で繰り返し現れる、非常に変化に富んだフィールドです。そのためポイントも多く、狙うべき場所の選択が重要になります。

渓流と一言で言っても様々な景色を想像されるかと思います。アユやヤマメ、ウグイなどが混棲する「里川エリア」、それより上流の「渓流エリア」ではヤマメだけでなくイワナも混じってきます、さらに上流の「源流エリア」はほぼイワナの生息域となります。河川のエリア分けは非常に曖昧になってしまうものですが、今回は「渓流エリア」上部から「源流エリア」を山岳渓流として扱っていきます

山岳渓流フライフィッシングのメインターゲットはイワナ

イワナとフライロッド

山岳渓流でのフライフィッシングのメインターゲットはイワナです。ヤマメが混棲している場所もありますが、基本的にはイワナの生息域となります。イワナはヤマメより低い水温を好むため、里川で見かけることはあまりありません。東北や北海道などの高緯度の地域では河口でも見られますが、関東以南では上流域から降ることはかなり稀です。流れの速い区間が多い山岳渓流では、餌(のように見える物)があれば、魚はとにかく口にします。イワナは悪食と言われるほど何でも捕食しますが、厳しい棲息環境も関係しています。今、目の前にある物を食べないと、次があるとは限らないからです。

イワナとヤマメの違い

イワナとヤマメ(アマゴ)はよく比べられる魚です。どちらもサケ科の魚ですが、イワナはイワナ属、ヤマメはタイヘイヨウサケ属と、属が違います。パーマーク(体側面の楕円形の模様)で見分けることもできますが、一番大きな違いはその体高の差です。イワナは円筒形に近い体つきで体高があまりありません。ヤマメは体高があり、断面にすると平たい体型をしています。水流を体の側面に逃しやすい形状のヤマメは、イワナに比べて泳ぎが得意なため、イワナは緩い流れに、ヤマメは速い流れに潜んでいると言われています。

山岳渓流フライフィッシングの穴場の探し方

山岳渓流でのフライフィッシングが魅力的な理由

山岳渓流でフライフィッシングする最大のメリットは、他のアングラーとバッティングする可能性が比較的低いことです。つまり、魚があまりスレておらず素直に出てくれるため、のんびり釣ってもある程度の釣果は期待できます。さらに、大自然の中で景色、水質も良いため魚だけでなく、目も楽しませてくれる好環境と言えます。ですが、全く人がいないというわけではないので、先行者がいた場合にはお互い気持ちよく釣れるよう、マナーを守ることが大切です。

最近では、1日中独り占めできるような河川も少なくなってきています。ですので、川選びも重要なポイントの1つと言えるでしょう。穴場の河川は、自分の足で探して見つけるしかありません。しかし、ただ闇雲に歩き回っても徒労に終わることも多く、時間がかかりすぎてしまいます。そこで、山岳渓流の穴場の見つけ方をご紹介いたします。

フライフィッシング向き山岳渓流の探し方1. 有名河川のある山域の別の川

有名河川や、その支流はどうしてもアングラーが多く魚もスレがちです。さらにその近隣の河川も人が集まりやすく、のんびりと釣っていられないことが多々あります。そこで、視野を広くして有名河川を抱える山域全体を見てみましょう。山の端や、反対側にも川があるはずです。同じ山域ですと、水質や渓相も似ているので魚影に期待ができます

フライフィッシング向き山岳渓流の探し方2. 花崗岩質の山域は避ける

花崗岩質の川は砂が出やすいので、魚影が薄い傾向にあります。岩や石の川底を産卵場所や隠れ家にするイワナにとって、砂の川底は居心地の悪い環境です。川では少なからず砂が出るものですが、あまりに砂が多い河川は避けた方が無難でしょう。

フライフィッシング向き山岳渓流の探し方3. 標高差が大きい河川は避ける

短い区間で標高差が大きすぎる河川もイワナが居つきにくいです。傾斜が急すぎる川は、出水のたびに大きく地形が変わる可能性があります。すると卵や稚魚も流されてしまうので、シーズンによっては魚が全く見えない場合もあります。

フライフィッシング向き山岳渓流の探し方4. アクセスの良い場所は避ける

車から降りてすぐ入ることができるような河川は、誰にとってもアクセスが良いのでやはり避けたいところです。都市部から離れており、さらに林道などの車止めから1時間は歩くような場所が狙い目です。

日本国内において人が全く入っていない流域は存在しないかもしれませんが、以上のようにできる限り魚がスレていない河川を探してみてはいかがでしょうか。

安全面にも配慮を

山岳渓流というフィールドは、その環境から少なからず危険な場所があります。足元の悪さや、激しい流れ、高巻きをしなくては釣り上がれない場合など、充分に注意してください。そういった際には決して無理をせず、周囲の状況や自分の体力を冷静に判断し、時には引き返す勇気も必要です。

最低限、救急キットやレインウェア、予備の行動食を準備しておいたほうがよいでしょう。特に標高の高い山岳渓流では、雨が降ると一気に10℃近く気温が下がることもあるので、レインウェアは必須と言えます。さらに肌寒い時に防寒具代わりとしても使えます。山岳渓流に限らず、釣り場をよく知ることは直接釣果に繋がります。加えて安全面にも配慮できるよう、どういった場所なのかしっかり把握しておくことが大切です。

山岳渓流フライフィッシングのベストシーズンは?

山岳渓流をフライフィッシングで釣るベストシーズンは夏です。秋の産卵期に向けて食欲がとても旺盛になり、上流へ上流へとイワナが集まってくるためです。この時期、降雨により増水するたびにイワナは川を上ります。出水によって水かさが増すと、平水時には越えられないような滝も遡上していくのです。真夏の里川では「夏ヤマメは1里に1匹」と言われるほど釣ることが難しくなります。日中、水温が上がりすぎ魚の活性が低くなるからです。それに比べて、上流ではイワナの活性が高まりますし、気温が上がりすぎない夏の山岳渓流はフライフィッシングのアングラーにとっても過ごしやすいエリアと言えます。

解禁直後は釣れない?

山岳渓流でのフライフィッシングのベストシーズンは夏ですが、解禁直後から狙うことも可能です。しかし、解禁直後(2月〜3月)の山岳渓流というフィールドはまだまだ冬山であり、地域によっては積雪が1メートルを超える場所もあります。そのため、気温水温ともに低く、それにともなってイワナの活性も低いので厳しい釣りを覚悟することが必要です。ですが、冬であってもイワナはもちろん餌を食べなくては生きていけません。その条件の良い短い時間をうまく狙えば、しっかり魚を引き出すことができます

この場合もまずは安全面への配慮を第一に考えるようにしてください。気温は氷点下ですから、しっかりとした防寒具を用意し、汗冷え対策も必須となります。さらに凍結していますので、ウェーディングシューズもフェルトのみの物より、スパイクタイプのソールが安心でしょう。

山岳渓流フライフィッシングのシーズン別ポイントとフライセレクト

山岳渓流の滝

山岳渓流でフライフィッシングするメリットの1つに、狙えないポイントがほぼないことが挙げられます。水面からボトムまで満遍なく探ることができるフライは、水深が5センチほどしかないような瀬ですら守備範囲にできます。逆に言えば、選択肢が多すぎるのでしっかりポイントを絞らないと効率が悪くなってしまうのです。

山岳渓流は里川のライズフィッシングなどに比べて、そこまでフライセレクトにシビアではありません。ですが、自然が相手ですので季節や水温、その時々の状況によって反応がガラッと変わってしまうものです。今、魚が何を捕食しているのか、ある程度でも把握できればどのフライを結べばいいか迷うことも減っていきます。

シーズンを通して狙う基本的なポイント

イワナはその名前の通り、岩陰や底石の周囲などに定位しています。自分のテリトリーに入った餌に対して捕食行為をすることが多く、川全体を大きく移動するような行動は少ない傾向にあります。ヤマメと比較して泳ぎが得意ではない性質であまり動かないですが、できる限りたくさん食べるという非常に省エネな魚です。以上のことを踏まえると、イワナにとって待っていれば餌が集まってくる安全で静かな場所がフライフィッシングで狙うべき基本的なポイントであると、ご理解いただけるはずです。

プール

山岳渓流のプール

プールは淵やトロ場など流れが緩やかで水深もあるエリアです。水棲昆虫のハッチもよく起こり、魚の捕食しやすい流速になっています。瀬尻からプールにかけて深くなっていく部分、最深部、プールから瀬へと繋がるかけあがりなど、魚が溜まりやすいポイントが多く、最も重要な場所です。

落ち込みの脇

山岳渓流の大きな落ち込み

イワナは上流から流れてくる餌を、落ち込みの脇の巻き返しや泡の中に潜んで待っています。身を隠しやすく食料の供給も安定しているので、魚にとってはリビングであり、ダイニングでもあります。シーズンを通して狙うべきポイントです。

白泡の中

山岳渓流の小さな滝と白泡

酸素が多く新鮮な水が流れ込んでくる白泡の中は、隠れる場所としても最適です。特に水温の上がる初夏から真夏にかけてイワナが溜まる場所になります。

流心と流心の脇

山岳渓流の流心

イワナは流心の脇に定位し、餌が流心を流れてきたら食べに行きます。活性が高ければ積極的に流心にも出てきますが、基本的にはまず流心の脇から流しましょう。

山岳渓流の肩

山岳渓流の肩(流れの始点)を流して反応がないようなら先行者がいる可能性が高いと言われています。ですが、水温が低い季節や時間帯にはあまり付いていないので、ここだけで判断するのは難しいです。落ち込みに向かう流れが集まる場所ですので、餌は必ずここを通ることになります。

山岳渓流のチャラ瀬

水温が上がる盛夏にはイワナは積極的に瀬にも出てライズをします。しかし、あまりに速すぎる流れではイワナはうまく餌を取れません。瀬以外の場所にも言えますが、秒速30cm以下の流れがイワナにとって最適な速度です。

解禁直後に狙うポイント

2月から3月の解禁直後は気温も水温も低いので、イワナは活発に餌を追いません。そのため、瀬や流心にはほとんど出て来ず、温度変化の少ない深場で水棲昆虫を捕食することが主です。この時期はまだ水量が少ない河川も多く、フライフィッシングで狙えるポイントも少ないです。しかし、かえってポイントを絞りやすいというメリットもあります。プールや落ち込みの脇などを中心に、とにかく水深のある場所、流れの緩やかな場所を探ります

解禁直後のフライセレクト

ドライフライのみでは厳しいので、主にニンフを使いますヘアズ・イヤーフェザント・テイルなどのベーシックなタイプでかまいません。軽めの物から重めの物まで、いくつかウェイトを変えて準備しておけば様々なシーンに対応できます。サイズは18番から14番ほどで各種用意しましょう。おすすめの仕掛けはニンフのトレーラーです。ウェイトを重めに巻いた14番のフックにティペットを30cm~40cmほど結び、ウェイト無しの16番や18番を繋ぎます。重い14番が先行してボトム付近をドリフトし、後ろから軽いニンフがナチュラルに流れるイメージです。ルースニングでも良いのですが、浮力のないインジケーターで自由に棚を取れば、一度に探れる範囲が広がります。

春から初夏に狙うポイント

ヤマブキの花が咲く頃になると、山岳渓流でも魚の活性が高まってきます。残雪もなくなり水量も豊富になるので、ここからが本番と言って良いでしょう。ただ、雪代が入る時期には、増水や濁りの影響で釣りにならないこともしばしばあります。水温も上り、瀬や流心でライズをする姿も多く見かけるようになります。ドライフライの季節になりますが、早朝から午前にかけて水温が充分に上りきっていない時間帯は、やはり深場を中心に狙います。そういう際は水面のみにこだわらず、魚の捕食対象に合わせて水面直下や水中も丁寧に探りましょう。

春から初夏のフライセレクト

ドライフライは、18番から12番のアダムス・パラシュートエルクヘア・カディスだけでも戦力になります。色味の黒い物を用意しておけばテレストリアルとしても使うことが可能です。初夏には、ピーコックで巻いたアントやビートルも加えます。クリップルタイプもあれば突発的なハッチに対応できるだけでなく、出の悪い魚の目先を変えることもできます。

夏から秋に狙うポイント

旬とも言えるこの季節、イワナは産卵にむけて食欲が非常に旺盛になっています。標高の高い山岳渓流でも日中は水温がかなり上がるので、常に新鮮な水と酸素が供給される流れがポイントです。落ち込みの白泡の中や、そこから続くバブルライン、流心の脇などを狙います。もちろん、深場のボトムなども水温が安定しているためこの時期も外せない場所です。

山岳渓流では雨天や通り雨の後など、時に入れ食いになることが多々あります。気圧の変化や水温の低下が関係していますが、様々な要素が関係しているので実際に何がトリガーになっているのかはわかりません。雨によって、岸から迫り出している木の枝や葉から陸生昆虫が水面に落下し、魚が興奮状態になることもあります。これは魚だけでなくフライフィッシングをするアングラーも興奮してしまう状況です。

夏から秋のフライセレクト

イワナが捕食に対して大胆になっているので、フライはパラシュートやカディスなどのスタンダードな物に加えて、大きな物、派手な物も用意します。ティンセルやコパーワイヤでリブを巻いたアピールの強いタイプやテレストリアルがメインになることもしばしばです。フックサイズは16番から12番がメインになります。

1日を通してドライフライでのフライフィッシングを楽しめますが、深い落ち込みは水面下やボトムをニンフで探ってみるべきです。賢い大物は警戒してなかなか水面まで出てこず、大場所ほど反応がないことが多いからです。ドライフライで何度流しても出なかった魚が、フロータントが切れ半沈みになった途端に食ったという場面も沢山あります。

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山岳渓流のイワナをフライフィッシングで釣る楽しさ

早春の山岳渓流とフライロッド

今回は、山岳渓流でフライフィッシングで釣る際のポイント選びとフライセレクトに関してご紹介いたしました。日常から離れ大自然の中でゆったりとロッドを振り、スレていない魚に相手をしてもらっていると、心からリラックスできるものです。フライフィッシングというと難易度が高いイメージがありますが、山岳渓流のイワナはとてもおおらかで素直にフライに出てくれます。決して簡単なわけではありませんが、水面からボトムまで幅広く対応できるフライフィッシングは、日本の山岳渓流にマッチした釣り方と言えます。

安全面にしっかり配慮し、山奥に足を向けてみてはいかがでしょうか。

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